サングラス越しの世界

色付きの世界を綴る日々の雑文集

【mons.Wolffの頂で】

夜を使い果たした私の瞼には、行き場を失った睡魔が重くのしかかっている。それは例えば黄昏の商店街で、半分だけ降りたシャッターみたいに、気を抜けば閉まりきってしまいそうな、それでも尚眠ってしまうことを拒む精神が私のどこかに漂流していて、降り切…

【夕立に傘を持たない私は】

…ここ数日、イッキに気温が上がって、まだ環境に適応できないニンゲンの代わりにそこいらの室外機は、類を見ないイキオイで泣き喚いている。青空に生える入道雲はいよいよその存在感を増して。例えばもし、絵だけの国語辞典があったなら、もくもく、の欄には…

【夜のノビ・ノビタ(4)】

少し、ほんの少し空が白んで空気は飛び切り冷たくなる。この時間が一般的に夜と呼ばれるのか、朝と呼ばれるのか、私は知らないし、その判断はきっと、その人の人生のある側面を切り出している。 曖昧な午前4時。今日の私にとってそれは紛れもなく昨日のつづ…

【紀行雑記3-1 北へ運ばれる妄想】

冬の日本海に巣食う旨い魚が食べたくなって、金沢へ。 旨い魚に出会うためには、魚が会いに来るか、魚に会いに行くしかない。有難いことに、文明の発達は両者の差異を矮小化したけれど、それでもやっぱり新鮮な魚に会いに行く方がいいに決まっている。 だか…

【雑感。美術館を泳ぐ異物】

(雑感、それは日記でもなく日誌でもなく、ただ日々の中にある雑多な感覚。時々は生活の中の一部分を切り取って見るのも良いかもしれないと思い、ツラツラと書き付けた) 雲と晴れ間が半分ずつくらいの少し暖かな冬の午後に、私はある人と美術館の前に立ってい…

【カサブタさんと見つめ合う】

風が少しずつ冷たくなる。空は少しずつ高くなって、夜は少しずつ澄んでいく。あんなに長かった夏はもう遥か遠い過去のことのようで青々としていたキャンパスの木々は赤黄色の厚化粧を纏い、まるで別人のようである。 また前回の更新から期間が空いてしまった…

【紀行雑記2-1 円卓に踊る】

空港に降り立てば、その国の匂いを感じる。それは変哲のないただの匂いなのだけど、その国の食や暮らし、文化、そして人々を内包している。景色や音で繕っても、"匂い"だけは嘘をつかない。 北京の雑踏に立つ。たくさんの車やバイク、自転車がひっきりなしに…

【紀行雑記1-4 ヴェネチアの夕陽】

ケーニヒスベルクの橋問題。オイラーが解決し、グラフ理論の発展につながる一筆書きの問題。ヴェネチアの街はあまりにも有名なこの問題を想起させる。街には細い路地が毛細血管のように広がり、至る所を水路が貫いている。 猫一匹通れるかという路地に立ち、…

【紀行雑記1-3 小さな国の大きな祈り】

白い一本の線で仕切られた国境を越える。そこに壁はなく、事務的な手続きすらない。 私は今、世界一小さな国、バチカンの広場に立っている。敷き詰められた石畳は朝日を反射し、荘厳な鐘の音は15分ごとに時を刻む。名だたる殉教者たちが楕円型の広場を見下ろ…

【紀行雑記1-2 ネイプルスイエロー、色と音の哲学】

"太陽の道"と呼ばれるその道は第二次大戦下でムッソリーニがドイツのアウトバーンを真似て作らせたという話を聞く。その長い長い道を左側に太陽を睨みながらひた走る。空気は乾燥し、大地は緩やかな勾配を作りながらどこまでも伸びている。遠くの山嶺には教…

【紀行雑記1-1 黒海に浮遊する脳】

私は紀行文というジャンルをほとんど読んだことがない。土佐日記を紀行文というのなら目に触れたことくらいはあるだろうか。だから私は紀行文というものがどうして存在し、どういう意味を持っているのかということについて、ほとんど何も知らないし、また考…

【打ち上げ花火、下から見るか、下だけ見るか(1)】

ジメジメとした梅雨が明け、青空に伸びる入道雲が夏の到来を告げる。目が醒めるような緑の陰で沢山の蝉たちが代わる代わる輪唱し、また時折降る夕立に梅雨前線の幻影を見たりする。あくびをする猫を探しに駐車場を散歩する毎日である。 長らく更新できていな…

【夜のノビ・ノビタ(3)】

眠れない夜である。眠れない夜には言葉が溢れてくる。言葉は常に私の中を流れていく、それはまるで未踏の山奥の小川のようであり、もしくは嵐の後の運河のようでもある。日々言葉は私の体を貫き、そしてまた誰かの体を貫いてゆく。 それでも、山奥の小川に留…

【人類総ハゲ時代の予兆】

冬と春の間にはもう1つ季節があるらしく、冬が終わってもまだまだ春は来ない。それはまるで桜のモラトリアムのようである。 さて、数回に渡りうどんについて述べてきた。相変わらず私の生活にはうどんが溢れている。(自宅での食事の8割はうどんだ) しかし、…

【うどんを数学する(3)マシュマロとゴムの間】

三寒四温、芯まで冷える日があると思えば、まるで地球全体がぬるま湯に浸かったかのような暖かな日もある。脇を吹き抜ける風はどこか知らない街へ春を運んでいるのだろうか。 私が更新を怠っている間、私やその周りの世界にはいろいろなことがあった。それは…

【うどんを数学する(2)太ること】

さて、飽きられる前に(というよりは私が飽きる前に)一連の思考を書ききってしまおう。今回はうどん数理解析の第2部である。 この回の目標は、 ・うどんがのびることを数学的に扱う。 ・きしめん率を導入する。 ことである。今回は非常に平易な回なのでゆるゆ…

【うどんを数学する(1)うどん関数】

冬至を越え、年を越え、そこから更に1ヶ月を経た。時の流れは早いもので今日などは春を期待させるような暖かさである。無論、肌寒い冬がもう少し続くことはほとんど自明の理であるが。 さて、死ぬまで食べても飽くことのない料理はあるだろうか?(私は斯様な…

【夜のノビ・ノビタ(2)】

眠れない夜である。否、眠らない夜かもしれない。テスト前になると私もそれなりに準備するので、生活が変則的になり、今日のように遅くまで勉学に励むこともあるのだ。(その期間が一般的に長いのか短いのかは成績を見れば火を見るよりも明らかなのだが) 研究…

【右手には指が4本しかない】

年が明けた。このところ冬将軍は少し影を潜め、例年に比べれば暖かな日が続いているように思われる。私の生活圏にも積雪はなく、安堵する大人な私と残念がる子供な私を感じたりするこの頃だ。 明けましておめでとう。このセリフも人生もう何度目だろうか。し…

【生まれたての僕ら〜年の瀬に寄せて〜】

世界がまた1つ歳をとろうとしている。誰が決めたかわからぬ誕生日に、私の部屋だけがその準備をできていないまま、一年が去り、またやってこようとしている。 さて、また数週間更新できていなかったが、これは明らかに私の怠惰的生活にその要因がある。 し…

【禁酒とミンクオイル】

村上春樹は死について、『死は我々を追いかけ捉えるものだ』と書いている。冬の寒さも、我々を追いかけ、捉え、そしてまた追い抜いて行くのだろうか。師走の数十日は、なにか気温とはまた違う"寒さ"を感じるような気がする。 さて、今回はそんな他愛のない冬…

【来る年と冬の花火】

夜が相当冷え込むようになった。冬は他のどの季節よりも空気が透明になる。帰路の街灯は何時にも増して輝くように見える。 さて、忘年会の季節である。身も財布も寒くなる季節かもしれない。私も3、4件の宴の席を用意しなければならず、予約できていないこと…

【タイホされる桃太郎】

師走に入り、時の流れは加速度的に速くなっている。立つ力を失った落葉は、またいつか咲く花のための肥やしになるのだろうと、そんなことを考えながらわざと音のなる葉の上を歩いたりなどする季節である。 さて、私は(誰もそんなことは気にも留めないし、そ…

【紅葉と感動するミドリムシ】

ねっとりとした残暑はもう、遠い昔のようである。秋風は空天井をぐいっと押し上げて、青空はとても高く、その向こうの宇宙を思わせる透明感で持って秋を盛り立てる。 さて、またまた日にちが開いてしまった。無意味な弁明をしておくと、これは私の生活特有の…

【地球くらい丸いこと(大切な1年間の備忘録にかえて)】

以下の記事は11月初旬に一度投稿し、諸般あって再度投稿するものである。無論、時候の挨拶やいくつか時系列に関しての矛盾があるが、その時感じた言葉を変えるのは惜しい気もするので、そのままにしておく。 (以下、本文) 秋雨が蕭々と降る。私は(久々に座る…

【夜のノビ・ノビタ】

眠れない夜である。夏が終わり、秋になると私は毎年かような夜を何度か繰り返す。秋の夜は長く、取り留めのない思索に耽ったり、意味を持たぬものを書いてみたりなどしても、まだまだ日はのぼってこない。 ブログを更新していないこともあるし、お酒も少し飲…

【ハゲオヤジ、または国家について】

爽やかな季節である。高い空に浮かぶ雲に朝日が反射して、世界がきらきらと輝くような。 さて、朝の通学でふと思い出した数学の命題がある。今回はそのパラドキシカルな論法とサイエンス、哲学、そして国家戦略の妄想をツラツラと綴ることにする。 "ハゲオヤ…

【数学的歩き方のススメ(梅田編)】

永遠と曇天が続く、秋晴れが待ち遠しい時分である。来たる台風が晩夏から尾をひく低い雲を運び去ってくれることを切に願っている。 さて、更新がかなり遅くなってしまった。夏期休暇中の私は、ものを書くにはあまりにも余裕がなく、考えるにはあまりにも時間…

【アンパンマンの本体はどこか?】

ここ数日、ブログの更新ができておらず、カリスマブロガーを目指す者としては余りにも怠惰的であると反省している。否、本当はずっと下書きに置いてある文章があるのだが、(これまた荒唐無稽意味不明な疑問についてである)どうやら今の私の手に負える問題で…

【ネコの陰謀論】

世界には2種類のおじさんしかいない。シラフでブログを書くおじさんと、お酒を飲んでブログを書くおじさんだ。私が今日後者であることは言うまでもない。さて、森見登美彦は自身の著書の中で以下のようなことを述べている。(うろ覚え)"魚を食べるやつはアタ…