サングラス越しの世界

色付きの世界を綴る日々の雑文集

2017-01-01から1年間の記事一覧

【カサブタさんと見つめ合う】

風が少しずつ冷たくなる。空は少しずつ高くなって、夜は少しずつ澄んでいく。あんなに長かった夏はもう遥か遠い過去のことのようで青々としていたキャンパスの木々は赤黄色の厚化粧を纏い、まるで別人のようである。 また前回の更新から期間が空いてしまった…

【紀行雑記2-1 円卓に踊る】

空港に降り立てば、その国の匂いを感じる。それは変哲のないただの匂いなのだけど、その国の食や暮らし、文化、そして人々を内包している。景色や音で繕っても、"匂い"だけは嘘をつかない。 北京の雑踏に立つ。たくさんの車やバイク、自転車がひっきりなしに…

【紀行雑記1-4 ヴェネチアの夕陽】

ケーニヒスベルクの橋問題。オイラーが解決し、グラフ理論の発展につながる一筆書きの問題。ヴェネチアの街はあまりにも有名なこの問題を想起させる。街には細い路地が毛細血管のように広がり、至る所を水路が貫いている。 猫一匹通れるかという路地に立ち、…

【紀行雑記1-3 小さな国の大きな祈り】

白い一本の線で仕切られた国境を越える。そこに壁はなく、事務的な手続きすらない。 私は今、世界一小さな国、バチカンの広場に立っている。敷き詰められた石畳は朝日を反射し、荘厳な鐘の音は15分ごとに時を刻む。名だたる殉教者たちが楕円型の広場を見下ろ…

【紀行雑記1-2 ネイプルスイエロー、色と音の哲学】

"太陽の道"と呼ばれるその道は第二次大戦下でムッソリーニがドイツのアウトバーンを真似て作らせたという話を聞く。その長い長い道を左側に太陽を睨みながらひた走る。空気は乾燥し、大地は緩やかな勾配を作りながらどこまでも伸びている。遠くの山嶺には教…

【紀行雑記1-1 黒海に浮遊する脳】

私は紀行文というジャンルをほとんど読んだことがない。土佐日記を紀行文というのなら目に触れたことくらいはあるだろうか。だから私は紀行文というものがどうして存在し、どういう意味を持っているのかということについて、ほとんど何も知らないし、また考…

【打ち上げ花火、下から見るか、下だけ見るか(1)】

ジメジメとした梅雨が明け、青空に伸びる入道雲が夏の到来を告げる。目が醒めるような緑の陰で沢山の蝉たちが代わる代わる輪唱し、また時折降る夕立に梅雨前線の幻影を見たりする。あくびをする猫を探しに駐車場を散歩する毎日である。 長らく更新できていな…

【夜のノビ・ノビタ(3)】

眠れない夜である。眠れない夜には言葉が溢れてくる。言葉は常に私の中を流れていく、それはまるで未踏の山奥の小川のようであり、もしくは嵐の後の運河のようでもある。日々言葉は私の体を貫き、そしてまた誰かの体を貫いてゆく。 それでも、山奥の小川に留…

【人類総ハゲ時代の予兆】

冬と春の間にはもう1つ季節があるらしく、冬が終わってもまだまだ春は来ない。それはまるで桜のモラトリアムのようである。 さて、数回に渡りうどんについて述べてきた。相変わらず私の生活にはうどんが溢れている。(自宅での食事の8割はうどんだ) しかし、…

【うどんを数学する(3)マシュマロとゴムの間】

三寒四温、芯まで冷える日があると思えば、まるで地球全体がぬるま湯に浸かったかのような暖かな日もある。脇を吹き抜ける風はどこか知らない街へ春を運んでいるのだろうか。 私が更新を怠っている間、私やその周りの世界にはいろいろなことがあった。それは…

【うどんを数学する(2)太ること】

さて、飽きられる前に(というよりは私が飽きる前に)一連の思考を書ききってしまおう。今回はうどん数理解析の第2部である。 この回の目標は、 ・うどんがのびることを数学的に扱う。 ・きしめん率を導入する。 ことである。今回は非常に平易な回なのでゆるゆ…

【うどんを数学する(1)うどん関数】

冬至を越え、年を越え、そこから更に1ヶ月を経た。時の流れは早いもので今日などは春を期待させるような暖かさである。無論、肌寒い冬がもう少し続くことはほとんど自明の理であるが。 さて、死ぬまで食べても飽くことのない料理はあるだろうか?(私は斯様な…

【夜のノビ・ノビタ(2)】

眠れない夜である。否、眠らない夜かもしれない。テスト前になると私もそれなりに準備するので、生活が変則的になり、今日のように遅くまで勉学に励むこともあるのだ。(その期間が一般的に長いのか短いのかは成績を見れば火を見るよりも明らかなのだが) 研究…

【右手には指が4本しかない】

年が明けた。このところ冬将軍は少し影を潜め、例年に比べれば暖かな日が続いているように思われる。私の生活圏にも積雪はなく、安堵する大人な私と残念がる子供な私を感じたりするこの頃だ。 明けましておめでとう。このセリフも人生もう何度目だろうか。し…