サングラス越しの世界

色付きの世界を綴る日々の雑文集

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

【紀行雑記1-4 ヴェネチアの夕陽】

ケーニヒスベルクの橋問題。オイラーが解決し、グラフ理論の発展につながる一筆書きの問題。ヴェネチアの街はあまりにも有名なこの問題を想起させる。街には細い路地が毛細血管のように広がり、至る所を水路が貫いている。 猫一匹通れるかという路地に立ち、…

【紀行雑記1-3 小さな国の大きな祈り】

白い一本の線で仕切られた国境を越える。そこに壁はなく、事務的な手続きすらない。 私は今、世界一小さな国、バチカンの広場に立っている。敷き詰められた石畳は朝日を反射し、荘厳な鐘の音は15分ごとに時を刻む。名だたる殉教者たちが楕円型の広場を見下ろ…

【紀行雑記1-2 ネイプルスイエロー、色と音の哲学】

"太陽の道"と呼ばれるその道は第二次大戦下でムッソリーニがドイツのアウトバーンを真似て作らせたという話を聞く。その長い長い道を左側に太陽を睨みながらひた走る。空気は乾燥し、大地は緩やかな勾配を作りながらどこまでも伸びている。遠くの山嶺には教…

【紀行雑記1-1 黒海に浮遊する脳】

私は紀行文というジャンルをほとんど読んだことがない。土佐日記を紀行文というのなら目に触れたことくらいはあるだろうか。だから私は紀行文というものがどうして存在し、どういう意味を持っているのかということについて、ほとんど何も知らないし、また考…

【打ち上げ花火、下から見るか、下だけ見るか(1)】

ジメジメとした梅雨が明け、青空に伸びる入道雲が夏の到来を告げる。目が醒めるような緑の陰で沢山の蝉たちが代わる代わる輪唱し、また時折降る夕立に梅雨前線の幻影を見たりする。あくびをする猫を探しに駐車場を散歩する毎日である。 長らく更新できていな…