サングラス越しの世界

色付きの世界を綴る日々の雑文集

2018-01-01から1年間の記事一覧

【mons.Wolffの頂で】

夜を使い果たした私の瞼には、行き場を失った睡魔が重くのしかかっている。それは例えば黄昏の商店街で、半分だけ降りたシャッターみたいに、気を抜けば閉まりきってしまいそうな、それでも尚眠ってしまうことを拒む精神が私のどこかに漂流していて、降り切…

【夕立に傘を持たない私は】

…ここ数日、イッキに気温が上がって、まだ環境に適応できないニンゲンの代わりにそこいらの室外機は、類を見ないイキオイで泣き喚いている。青空に生える入道雲はいよいよその存在感を増して。例えばもし、絵だけの国語辞典があったなら、もくもく、の欄には…

【夜のノビ・ノビタ(4)】

少し、ほんの少し空が白んで空気は飛び切り冷たくなる。この時間が一般的に夜と呼ばれるのか、朝と呼ばれるのか、私は知らないし、その判断はきっと、その人の人生のある側面を切り出している。 曖昧な午前4時。今日の私にとってそれは紛れもなく昨日のつづ…

【紀行雑記3-1 北へ運ばれる妄想】

冬の日本海に巣食う旨い魚が食べたくなって、金沢へ。 旨い魚に出会うためには、魚が会いに来るか、魚に会いに行くしかない。有難いことに、文明の発達は両者の差異を矮小化したけれど、それでもやっぱり新鮮な魚に会いに行く方がいいに決まっている。 だか…

【雑感。美術館を泳ぐ異物】

(雑感、それは日記でもなく日誌でもなく、ただ日々の中にある雑多な感覚。時々は生活の中の一部分を切り取って見るのも良いかもしれないと思い、ツラツラと書き付けた) 雲と晴れ間が半分ずつくらいの少し暖かな冬の午後に、私はある人と美術館の前に立ってい…