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サングラス越しの世界

色付きの世界を綴る日々の雑文集

【タイホされる桃太郎】

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師走に入り、時の流れは加速度的に速くなっている。立つ力を失った落葉は、またいつか咲く花のための肥やしになるのだろうと、そんなことを考えながらわざと音のなる葉の上を歩いたりなどする季節である。

 

さて、私は(誰もそんなことは気にも留めないし、そもそも誰の目にも触れていないが)このブログを書くにあたり、できる限りジャンルが被らないようにと心がけている。サイエンスの話があればそれと同じだけカルチャーがあり、アートがあるように心がけている。それでもやはり、自分の本領というのは1番愛好してしまうもので、どうしてもサイエンスに偏りがちである。

 

しかしながら、私はもともと法律家を目指していた。法も物理同様、哲学から伸びる論理の枝葉なので、今でも趣味的に読んだりする。

 

 

前置きが長くなってしまったが、今回は六法全書を片側に置いて桃太郎を読んだらどうなるか、という思考実験である。(この話にオチはなく、完全な自己満足と承認欲求のみによって構成されていることを前提に読んでほしい)

 また、先に断っておくが、私は法律家でもその卵でもない。ただ法律を言葉の玩具として遊んでいるに過ぎない。したがって、法解釈の間違い、観念的競合等は度外視していただきたい。

 

 

さてさて、それではおとぎの世界へ…

 

 

『タイホされる桃太郎』

むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。(まだ合法)

 

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。(水質汚濁防止法による規制施設を通さない排出)

 

おばあさんが川で洗濯していると桃が流れてきました。おばあさんはそれを家に持って帰りました。(占有離脱物横領罪)

 

持ち帰った桃を割ると、なんと中から元気な男の子が生まれました。おじいさんとおばあさんはその子を桃太郎と名付けて育てました。(戸籍法第49条、52条における出生届書の未提出、3万円以下の過料)

 

桃太郎は元気に育ったものの、一日中、村で悪さをしていました。(学校教育法第91条、教育義務の放棄、10万円以下の罰金)

 

おじいさんとおばあさんは桃太郎を鬼退治に向かわせることにしました。(殺人教唆)

 

桃太郎は旅の途中で犬、猿、キジと出会い、お供にしました。(新鳥獣保護法における不許可捕獲、キジは特定鳥獣)

 

桃太郎は船で鬼ヶ島へ向かいました。(小型船舶の登録等に関する法律、船舶の登録番号等の不打刻、1年以下の懲役または30万円以下の罰金)

 

鬼ヶ島に着いた桃太郎は3匹のお供を連れて鬼と戦いました。(動物愛護法第44条、100万円以下の罰金)

 

鬼を退治した桃太郎は、鬼の持っていた金品を村へ持ち帰りました。(強盗致死傷、死刑または無期懲役無期懲役または6年以上の懲役)

 

めでたしめでたし

 

 

とんでもない物語だ。夢がない。こんなお話を聞かせたら子供達はどうなるだろう。(私のように卑屈な性格になってしまう)

ちなみに、税関を通さない不開港への入港、輸入は関税法で禁止されている。

 

 

こんな思考実験から学べることなどほとんど皆無である。(先に述べたようにこの話にはオチがない)

しかしながら、絞りかすのようなこの話から無理やり何かを見通すとすれば、それは科学とヒトの決定的な差異だろう。

サイエンスの世界では、100年前に正しかったことは今も正しい。(理論のパラダイムは変わるかもしれないが、実験データは嘘をつかない)

けれども、ヒトの世界では、100年前の常識が今の非常識になりえるのだ。それは法律だけに限ったことでなく、言葉もマナーも人間関係だってそうかもしれない。

 

そういう変わりゆく世界の中で我々は生きている。それはとても難しいことだ。極論すれば昨日までの模範解答が今朝起きれば0点になっていることだってあるのだから。

 

それでも私たちは(まるで信じられる支柱のない世界で)生きていかなければならない。稀代の哲学者たちはそういう不透明な世界から本当に信じられるものを見つけ出そうとした。

もしかすると、私たちだって、飾らない日常の中にそういう、"変わらないもの"を探し続けているのかもしれない。タイホされなかった桃太郎の人生と、タイホされる桃太郎の人生の中に共通の何かを見出そうとしているのかもしれない。

私は科学の道にいる人間だが、それでも人文学の目指す変わらないものを信じたいと思ったりしている。

 

 

あまりにも長く、とりとめのない文章になってしまった。年末にかけて多忙を極める中、体調には気をつけて。